chocolate melts with music

行ったライブメモ

もう眠りはないぞ、マクベスが眠りを殺してしまった

オペラ「マクベス」、野田秀樹演出。新国立劇場で観てきました。年に一回くらいはクラシック鑑賞してるかも。親と一緒にね。高いから。
演出がいろいろ面白かったです。さすがというか。
「魔女たちを戦場の死者たちと捉える」ということで、黒いヴェールのような衣装で顔も全部隠して、頭の上に髑髏を乗せた魔女たちが、3人じゃなく、合唱する人も踊る人もたくさん出てくるんですが、冒頭の登場シーン、黄色い水仙の花畑から髑髏がぽつぽつと浮かび上がってくるさまが、なんとも不気味で、ゾクゾクきました。始まる前から幕は上がっていて、ひどく平和な風景で始まるんだなーと思っていたので。
あとけっこうユーモアも効いてました。ブラックな。マクベスに暗殺を命令された兵士たちが、手を下すのを恐れて武器を譲り合うというシーンがあって、私はそれはとても日本人的な感覚だなーと思ったのだけど、きっとそういう皮肉だったのでしょう。マクベス軍の兵士たちの衣装も、ちょっと旧日本軍風だったと思う。んで後で出てくるイングランド軍は赤い衣装で、父親はそれは中国軍と重ねてるんじゃないかと言ってたけど、あながちそれも穿ちすぎでもないのかも。
ただね、そういういろいろは面白かったんですけど、全体の印象は、やや散漫なところが。オペラという形式は、やっぱちょっとテンポがね。冗長に思えてしまう。歌、長いわりに言ってること少ないし。だいたいイタリア語だし。そこは音楽を、ソプラノの美声を楽しむ所だ、と言われればそうなんだけど。実際、声の迫力は凄かったんだけど。でも、それと劇を楽しむ所のバランスがどうも、調整しづらいと言うか。やっぱちゃんと演劇を観た方が、演出の訴求力は強いんじゃなかろうかと思った。オペラも、今は高尚なものに扱われるけど、元はけっこう庶民的なエンターテイメントだったんじゃないっけ。形式自体があんまり、集中力がない感じがするな、と思いました。野田さんの演出だから却って、なのかなぁ。要は、現代のテンポじゃないなーってことなのかもしんないけど。
ああでも、オペラにおける演技と言うのは、もっとおざなりなものかと思ってたけど、マクベス夫人など特に、歌でも所作でもすごい感情が感じられて、それもかなりウェットな感じで、良かったです。
まぁ、造詣深くないだけですけど、たまにはいいですね。いや、出来はすごく良かったんだと思ってるんですけど。