chocolate melts with music

行ったライブメモ

猫森集会2013 Bプログラム

谷山浩子さんが2002年から毎年秋に、新宿の全労済ホール/スペース・ゼロで開催している、四方を客席で囲まれた「360度型コンサート」シリーズ、猫森集会。A,B,C,Dの4つのプログラムを2日ずつ、計8日間行われますが、今年はA,B,Cプログラムを9月に、Dプログラムは10月に青山円形劇場で行われるそうです。そして、そのBプログラムのゲストにオーケン!というわけで、Bプログラムの2日目に行って参りました。
谷山さんのコンサートは初めてです。楽曲もちゃんと知ってるのは、まっくら森のうたとか、しっぽのきもちとか、みんなの歌系?をちょっとだけ。なんかすごく深い世界らしいことはなんとなく聞き知ってましたが…行ってみたらたしかにすごく引き込まれました。
終演後に貼り出されていたセットリスト↓

最初5曲、谷山さん(ピアノ、歌)と石井AQさん(シンセなど)の二人で。NANUKはシロクマの歌。そっくりハウスとまっくら森はみんなの歌から。まっくら森をいきなり生で聴けて嬉しかった。そしてその後のトークで、この最初の5曲のテーマは「白から黒へ」で、まっくら森がその境界線というふうに(「でも真っ黒じゃないから、心配しないで」とも)言っていたのですが、私はその後の「黒」に近づいていく曲のほうが特に惹かれました。穀物の雨が降るの終末的?な世界には引き込まれながら聴いて、そして次の卵に至っては、聴きながら何だか涙が出てきてしまった…初めて聴く曲で泣くとか初めての経験…。なんかすごく刺さる歌詞だったんだ…。

そしてこの辺の歌の世界観で、なんとなくオーケンとは近いのかもなというふうに感じました。
あと、曲の合間にこまめにトークが挟まれるところ、そしてトークのゆるいというかのほほんとした雰囲気も、近いなぁと。これは谷山さん自身もおっしゃっていたことですが。
谷山さんはオーケンを知ってはいたけどずっと接点はなく、去年の猫森集会でゲストに決まった六角精児さんのライブを見ようと思ったら、たまたまFOK(フォーク・オーケン)のライブに六角さんがゲストで出る回があったので、六角さんを見に、そのついでに(とは失礼ですが)オーケンを見たのが初めてだったのだそうです。で、そのライブを見て、オーケンのライブの「とても本番とは思えない」だらだらした感じに親近感があったそうです。なのでそのオーケンをゲストに招いた今回は「曲順をしっかり構成して、ここで盛り上げてとか、そういうのはもう無理だと思って、やれる曲を成り行きでやって〜という感じの進行にしました」みたいなことおっしゃってたり。あとオーケンが登場する前のトークは短めにして、「時間の貯金をしないと。ミヒャエル・エンデがダメだといった時間の貯金…」なんてことも。昨日の反省だそうで。
「猫森集会のゲストには、基本的には楽器の出来る人が来て、ずっとセッションをすることが多いけど、今回のゲストの大槻さんは歌だけなので、今回はたくさん歌って頂くことにしました」と谷山さん。「じゃあこのギターは何なんだという話ですが…それは追々ご本人に説明して頂きましょう」
というわけで、ゲストの登場。出てくるなり谷山さんに「今日はダンディな感じで…」と言われ。メガネもしてたんだけど(そして谷山さんはメガネ萌えらしい)すぐ外してました(この時点で、もう老眼鏡の話などでゆるゆるな雰囲気)。四角いステージの周り四面を客席が囲んでおり、谷山さんと石井AQさんが対角線上にいて、その間の一角にオーケンが座ったのですが、私の位置からはオーケンは完全に背中だけが見えてる状態でした。合間に時々振り返ってくれたりもしたけれど。椅子も昨日から変えてピアノ椅子になったそうで、オーケンが腰痛いからだって…。傍らにはギターが2本置いてあったんですけど、1本はサイレントギター。しかもコードつながってない…。「手持ちぶさたなので、弾いている体で」という、NESSケン以来の(笑)。「弾けばいいのに、弾き語りすごく素敵だったのに」と谷山さんに言われていましたが、「いやいや、平気で違うコードとか弾いちゃうので」と固辞するオーケン。上述のFOKライブを谷山さんが見に来た話はオーケンが登場してからしていたのですが、「弾き語りのライブ、弾き語りの!ライブ(笑)」って、大事なことだから二回言ってて面白かった。
そんなわけで、形だけギター持ったオーケンの歌、谷山さんと石井さんの演奏で、あのさぁから。後のトークで「かわいらしい純愛ソングですよね」と言われる。なんか曲が出来たときの話とかしてたな。オーケンNHKホールで美輪明宏さんのコンサートに行ったときに、一緒に行く友達が遅れて、もう始まってるのに外で待ってるときに、急に出来た曲なんだとか…。じゃあ「あのさぁ」っていうのはちょっとキレてるのかもしれないって言ってたのが可笑しかった。あと「この曲は井上順さんに歌ってもらったらいい」とか、そういうふうに誰かを想定して作るときがあって、これは井上順さん決めうちなんだとか。「お会いすることもないですけど、お会いできたらお願いしてみようかなぁ」
それから次は筋少曲で、猫のおなかはバラでいっぱい、これは「猫森集会」と聞いてぴったりだと思った曲、とオーケン。私も同じように思ってたからやってくれて嬉しかった。沼の女の人の台詞部分とハモりを谷山さんが。続けてもう一曲は、香菜、頭をよくしてあげよう、筋少の中でも人気曲と。これも終わった後のトークで、モチーフになったのは女の子と『トイズ』という映画を見に行ったときの話だとか。でもその子にはいろいろ教えてあげたわけではないらしい、「これでダメだとなぁ…キューブとか行けないんだろうなぁ」とかそんな感じで。
そして、話を去年出会ったFOKのライブの話に戻して、谷山さんがそこで聴いて「心臓を鷲掴みされた」という、大好きな曲を次に。これはオーケン一人の弾き語りで、ここだけアコースティックギターの登場。曲は、ノゾミ・カナエ・タマエ!谷山さんがこの曲を好きだというのが、なんかすごく「さすが」って思った、というか、さっきの谷山さんの曲からイメージしたものとつながるところがあって、なるほどなぁと。これの弾き語り、いいよねぇ…!オーケンソロのライブには最近あまり行ってなかったから、ここでこれを聴けて良かったです。その後で、谷山さんがその歌詞について「全部燃えてしまえっていうだけならよくありそうだけど、その炎の中で女の子の屍がずっと歌っているところがすごく良い」とか「5100℃の炎、と数字が出てくるところが良い」などと褒めていました。それに対してオーケンはまぁ「なんだか分からない数字ですよね」とかって言ってたり。この曲は高校生くらいのころにできたもので、鼻歌で作ってたから、筋少メンバーに歌って説明するんだけどなかなか採用してもらえなくて、中期頃のアルバムでようやく入った、などと話していました。
ここからいよいよ、谷山さんの楽曲をオーケンが歌うコーナー。ジョイサウンドで必死に練習した成果が出るというオーケン、谷山さんと石井さんにキーを指定するのに、GとかAマイナーとかじゃなく、ジョイサウンド基準で3個上げとかそういうので、ジョイサウンドが単位になって3Jとか5Jとか言ってた(笑)。一曲目は、お早うございますの帽子屋さん。谷山さんにこれを選ぶのはちょっと意外だったと言われ、「いや、これならまぁ歌いやすいかと思ったんだけど、ジョイサウンドでやってみたらやっぱり難しかった」とのこと。そしてもう一曲、ボクハ・キミガ・スキは、オーケンが谷山さんファンの友人に「今度ゲストで出る」と話したら「ならこれを絶対やれ」と言われた曲なんだとか。どっちも良かったし、本当に歌い込んだんだなぁという感じがありましたけど、特にボクハ・キミガ・スキは、はまってましたね。谷山さんも後で言っていましたが、感情がのっているというか、切実さがにじみ出してくるような感じがあって。好きだという気持ちを自分の中に押し込めるけど切なくあふれ出してしまうという歌。後のトークでは、オーケンが谷山さんの歌うこの歌を聴いたときには、最初の「ボクハキミガスキ」が逆ギレっぽく聞こえるとか、その最初の「ボクハキミガスキ」のところをオーケンがどうしてもうまく入れないというので、「絶対変なんだけど」と谷山さんは言ってたけどそこだけ谷山さんが歌ったとか、そしてそこも含めて拍子が変わったりアレンジが難しいという話で、オーケンが「筋少でもそうだけど、若い頃ってどうしてこう変拍子とか、小難しいことやりたがるんでしょうねぇ」みたいなこと言って、この曲もやっぱりだいぶ若い頃のアレンジでした、と石井さん共々話してました。あと、ジョイサウンド練習のときのカラオケ画面の話とか(笑)。
続いては「持ち歌交換会」ということで、今度は谷山さんがオーケンの曲を歌います。まず筋少を二曲、蜘蛛の糸と機械。機械っていうと「おおっ…」って声が起こる、人気曲なんですね、と谷山さんが言ってましたが、私も思わず声が出た。「大槻さんのファンから、もう二度と歌わないでくださいとか言われたらどうしようと思っていたけど、昨日のアンケートではわりと良かったといってくれる方が多くて、今日はだいぶ気持ちが大きいです」と。谷山さんが歌う蜘蛛の糸、すごく良かったなー。大丈夫大丈夫…の細く揺れる感じとか。オーケンが「笑ってろ見てろよ 気のせいさ眠れよ」のところをやっていたけど、ちょっと慣れてない感じがあったり。機械はどうなるのか、と思ったけど、美しかった!また聴きたい…。音域が広いので、サビのメインメロディはオーケンが歌って、谷山さんがハモりでしたが、しかし全然違和感なく、はじめから谷山さんの曲のように歌っていました。オーケンも素晴らしいと、「あげます」と言って、じゃあ筋少トリビュートやるときには呼んでくださいって話になってました。是非!機械のサビで壁に星みたいな照明がついて、すごくきれいで、星空に包まれたみたいでした。 オーケンミュージックフェアNHKのSONGSに出てる気分、とか言ってたけど。
そして続いては、特撮の曲も。この曲をカバーしてもらうのは水木一郎さんとしょこたんに続いて三人目…しょこたんはまだ秘密だけど(って言ってたけど、もうほとんど分かってる話なんじゃないのか・笑)。ヌイグルマー。オーケンが弾き語りしてたのに近い感じのアレンジで、NUIGULUMARのコーラスをオーケンが。これもすごく素敵でした。「これもいい歌だけど、切なく見せておいてけっこう鬼畜ですよね」って谷山さんが言ってたのが面白かった。あと「Love is a Teddy Bear」の「テディベア、アー」の歌い方が良いですって、「ア、アー」を何度かやってたのも。で、オーケンが「女の人がやるとちょっと色っぽいですね、伊勢佐木町ブルースみたいで」って(笑)
ここら辺のトークで確か、ROLLYさんの話が出たり、青森の夏の魔物フェスでのステージの話したり(ROLLYさんはその後プロレスにも出て、とかって話で、谷山さんと石井さんがえっ?ってなったりしてて可笑しかった)、オーケンの日本のほほん化計画の番組(ゆうゆう散歩みたいな番組と言ってた)の話をして、浅草で初人力車がかまやつさんとだったとか、かまやつさん、朝からロケなのに4時まで飲んでて、最初「大丈夫ですか」って言いそうになるような様子だったけど、その後ロケ中にお酒飲んだら元気になったとか、って話いろいろ盛り上がりました。トークがどんどん脇道に逸れながら盛り上がるのがすごく楽しかった。
その後はまた谷山さんの曲に戻って、オーケンと谷山さんと二人で歌う感じで、まもるくん。一番衝撃的だった曲(笑)「人生や世界の不条理を歌った歌ですよね」とオーケン、「聞いたときこれだと思いました」って。だろうね!って感じです。動画でライブ前に聴いてたんですけど、やっぱりすごかった。中毒性があるので、結局終演後一番頭に残ってた。そして本編最後の曲、かおのえき、これもカオスな曲で、すごくお似合い。インドっぽい曲調もオーケンにぴったりな感じでした。まもるくんは、帰ってからも何度か聴いて谷山さんの声で聴き馴染んでいくけど、かおのえきはオーケンも入ってるバージョンでまた聴きたいです。
アンコールはお礼の曲で、フィンランド。エアギターなのにカポをつけるオーケン(笑)。かわいらしいけど、よく聴くとところどころちょっとひどい歌詞(フィンランドに対して…)のような気もする…。
オーケンも谷山さんとは異ジャンルだけど世界観が近いように感じると言っていたし、谷山さんは終演後のツイートで「大槻さんとは同じ星からきたような感じがする」と言っていました。あと「気を遣わないでくれるのがいい」みたいなことも。オーケンは「それなりに気は遣いますけど、なんていうか…僕も後輩に気を遣わせないようになりたいんですよ」とかって。楽曲でもトークの雰囲気でも、初めてとは思えないほどしっくり馴染んでいると感じました。持ち歌交換も本当に違和感なかったし。谷山さんのほんわりしてかわいらしい雰囲気も魅力的でした。
すごく素敵だったのでまた是非一緒にやって欲しいです。一緒にCD出したりとかも良いと思う!