chocolate melts with music

行ったライブメモ

歌と朗読

16:30〜
戸川純「歌と朗読」
演奏/市川聡(ギター)関谷友加里(ピアノ)森定道広(コントラバス)橋本達哉(ドラムス)田中ゆうこ(コーラス)

先着80名、ということで、直前にもうダメだろうと思いながらもメールしてみたところギリギリ?で予約できちゃったので、大阪行きを決定したのでした。筋少もあるしー、的な。
会場はこんなところ。かなり古い建物…地震とかあったら怖いなーっていう…(笑)

いろいろとプログラムがあったのですが、時間的に純ちゃんの前後の演目だけ少し見ました。パフォーマンスだったりライブだったり、あと会場内に絵の展示などもありました。

純ちゃんのコーナーの前に、いったんお客さんは全員外に出て、場内セッティング直し。椅子を大幅に増やすなど。やっぱりそこで人がわっと増えた感じでした。で、改めて整理番号で呼ばれて入ったんですけど、自分がホントに一番最後かと思うくらいギリギリだったけど意外とそうでもなく、立ち見にもならず、純ちゃんのお顔がよく見える位置に座ることができました。
今回は「歌と朗読」で呼ばれたということで、詩の朗読と、歌は静かめなものが多いとのこと。待ちの間に20th Jun Togawaが流れていたのですが「そんなのはあまりやらないので…」と最初に言ってました。あとまた怪我以降の経緯も簡単に。
服装は、赤タータンチェックのシャツ、ジーンズのベスト、黒レースのロングスカート、黒レース+リボンの帽子、茶色のブーツ。最近のライブのときより私服っぽい感じかな?ジーンズのものとか珍しいような気がする。
構成としては、詩の朗読を何篇かの後に短く静かめの歌を一つ挟む、というのを前半繰り返し、後半にはまとめて歌のコーナーで、少し盛り上がる曲もあり。
以下いぬん堂さんが書いていたセットリストから(順番はあやふやとのことで、私もあやふやながら補正したようなかえって間違えてるような。歌は合ってると思うけど朗読はあやふや)。

  1. 羽虫(朗読)
  2. 怒涛の恋愛2(朗読)
  3. 大天使のように(朗読)
  4. いじめ(歌)
  • ナルシストの尿(朗読)
  • ロリータ807号(朗読)
  • 私たちはいつも(朗読)
  • 金星(歌)
  • 突貫魔がさし娘(朗読)
  • 妹賛江(朗読)
  • 蛹化の女(歌)
  • 諦念プシガンガ(歌)
  • 極東慰安唱歌(歌)
  • 吹けば飛ぶよな男だが(歌)
  • 怒涛の恋愛(歌)
  • バージンブルース(歌)

朗読は樹液すする、私は虫の女 (ケイブンシャ文庫)文庫本から。朗読のバックには、バンドさんが作品ごとに違った雰囲気の音をつけていて(インプロだそうです)、読み終わると純ちゃんがそれを止める、という感じでした。
朗読。最初は「羽虫」から。CD-Yにも収録されているので聴き馴染んだ感じがある作品から始まりましたが、続けていくつか聞くうちに、純ちゃんのいろんな表情、声色が現れて、すごく良かったです。文学的な堅い言葉の多いものから、演劇要素の濃いもの、歌詞の原型、など。朗読って面白いですね。やっぱり女優だな、っていうのが、当たり前かもだけど、普通にMCで話すのとは全然違うテンポにもなるし、舌足らずだけど噛むことはないし、言葉も聞き取りやすい。他にいろんな話も聞けました。
「大天使のように」は歌詞の原型、詩と歌詞は別物と思っているけど、どっちが好きかと言われたら、これに関しては詩のほうだとか。あの歌はあまりライブでやったこともないよね…
「ナルシストの尿」は演劇的に、ちょっとオーバーに。少し笑いが起きるくらいの。内容的にもね。確かその前に「さよならをおしえて」を最近やってない、途中の台詞が震災後はやりにくくて、ほんとはやりたいんだけど、みたいな話をしていたような。大阪だから言っちゃうけどって、ちょっとやってた。「たとえ大惨事が起きて、濁流が走り…」って。2番でも死んで幽霊だし、たくさんの人が亡くなった後では…というような。
「ロリータ807号」、原型なのになぜか数字は108号より増えている(笑)、108号は厳しい父親に処女を破ったら自爆するように改造されたサイボーグの悲哀がテーマだけど、元の詩のほうにはそういう悲哀の要素はない、同級生(?)の男の子からの視線であると。この朗読は軽快な感じで、絵が浮かぶようで面白かった。これもちょっと笑いがあったり。「好きなんだ!807号〜」っていうのが、コミカルだけどちょっとせつなさもあって、まるでその想いが通じてなさそうな807号が強そうで、ぜんぜん違う魅力だなーと。
「突貫魔がさし娘」は恋のコリーダの原型。「煩悩の船に乗って 業の海を渡り」のところのリズム感が、歌とはまた違っていいですね。朗読後、歌のほうだと3番で「ブラフマン的大宇宙」とか出てくるだけど、こんなのも妹・京子さんには「お姉ちゃん、大げさなんだから〜」とか言われちゃいそうだ、という話から、少し京子さんの話。そして「妹賛江」の朗読へ。
私は復刊されたやつしか持ってないのだけど、「妹賛江」は復刊版には載っていなくて。純ちゃんも確か「あると思ったらなくて、文庫本のあとがきにあった」というようなことを言っていたのだったかな。朗読は散文的で、ちょっと早口、でも後半にだんだん詩的になって、でも最後ちょっと落ちがつく、みたいな。内容も面白かった。純ちゃんは寝つき寝起きが悪くてその代わり睡眠のありがたみがわかる、と同じくB型のお母さんとも話していると、A型の京子ちゃんに「でもそれより起きている時間のほうが大切なんじゃないの」と言われてしまう、というようなエピソードから、妹を讃えるところへ、で最後にこれだけ褒めたから姉の寝起きの悪さを許してね、というような。詩の中で京子さんについて「生命力の強い、太陽のような」といった表現が出てきて、朗読後に「だから太く短く、だったのかな」と少ししんみり。その後、「命日でもなんでもないけど、よかったら天国の京子に拍手を」と言われて、満場の拍手もありました。
あと、純ちゃんが朗読する文庫本に何も印もつけていなかったみたいで、ときどき次読む作品のページが分からなくなって、一度は「見つからない!」と控えてたいぬん堂さんに探してもらったりもして、そして最後の最後で「目次見ればよかったんだ!」とか言ってたんですけど(笑)、そういうのも京子ちゃんに「お姉ちゃん、ブックマークとかちゃんとしておけばいいのに〜」って言われちゃうって。その「お姉ちゃん」の言い方が特徴的でしたね。
後半の歌コーナーでも、ちょいちょい解説的なMCを挟みつつでした。ほんとに純ちゃんは“説明ちゃん”だよなーとか思いました。吹けば飛ぶよな〜は、自分自身のために歌うっていうテーマで、修辞的に左っぽいことが出てくるけど、2番では「ただ己自身のためだけに」ってくどいくらい言ってる、とか。あと怒涛の恋愛は、ソロファーストアルバムの最初の曲で、ここから戸川純が始まったような思い入れがあるとのこと。
静かめの曲が多いけど、最後のバージンブルースだけ盛り上がるやつで、一人で盛り上がってるみたいになるかもだけど、これだけやったら逃げるように帰りますって言ってたのが面白かった。バンドの演奏がジャズっぽい感じで良かったです。
メンバー紹介で、人の顔や名前がぜんぜん覚えられないけど、いろいろ語呂合わせみたいな何かにひっかけてがんばって覚えた、と。小学生のときにゆかりちゃんって友達がいたから覚えた関谷友加里さん!とか(笑)ピアノ伴奏のみという曲もあったりで、一番演奏が印象に残っています。
時間としては一時間くらいだったかな(16:30より15分くらい?押して始まって、終わったら18:00前だった)。ちょっと珍しい機会で、なかなか濃密でした。うん、行って良かった。

樹液すする、私は虫の女 (ABC SUPER BOOKS)

樹液すする、私は虫の女 (ABC SUPER BOOKS)

ああ、あと、「小説執筆中、来年、その後には詩集も出したい」という意欲でした(確報ではないでしょう)。