chocolate melts with music

行ったライブメモ

2004年ライブ初め。

どうなっちゃうの、今年のシロップは。年の初めにこんなの見せられたら。怖いよな期待に。

  1. もったいない
  • 生きたいよ
  • イエロウ
  • 生活
  • Sonic Disorder
  • ソドシラソ
  • 神のカルマ
  • ex.人間
  • シーツ
  • My Love's sold
  • 手首
  • センチメンタル
  • パープルムカデ
  • 愛と理非道
  • 無効の日

    ゲスト:岡村美央(vln)
  • My Song
  • 正常

    ゲスト:吉村秀樹(g: bloodthirsty butchers)
  • (enc1)She was beautiful
  • (enc1)天才
  • (enc1)(新曲?)
  • (enc1)coup d'Etat
  • (enc1)空をなくす
     
  • (enc2)落堕
  • (enc2)真空
  • (enc2)翌日
     
  • (enc3)Reborn

今回は一応、『パープルムカデ』と『My Song』のリリースツアーのようなもの、という認識でいたのですよ。12月の、仙台他でのライブのセットリスト見ても、『My Song』から全部やって、「ムカデ」やって、「回送」やってって、そういう感じだったし。
だから、意外に『coup d'Etat』の曲が多くて、もちろん聴けると思ってなかったものが聴けて嬉しかったんだけれども、もう2曲目に「生きたいよ」がきた時点で泣きそうだったし、でも驚いたんだ。また?これも?って思うくらい、これでもかってくらいにやられて。途中でひょっとして今日このまま『My Song』やらないんじゃないかって思ったもの(笑)。そしたらすごい裏切りだぞって。だって、もしこれ、『My Song』聴いて好きで来たっていう人いたら、びっくりするだろうよ。かなり攻撃的な曲で固めてきてるし。歌詞も、オブラートというか修辞でくるんでなくて、そのまま突きつけてくるようなの多いじゃないか。CDと生うたの違いだけでも大きいのに。言ってることが暗いから、CDだけ聴いて初めてライブ行くと、ただでも驚くんだよね。なんか、エネルギーに。パワフルとかエネルギッシュとか言うと、言葉としては全然似合わないんだけど、でもそういうものが、静かにだけど確実に漲っていて。今回はそれが、今まで見た中で一番というくらいに、張り詰めてた。何かの決意表明のようだった。今年はやるぞってこと??
つまりは私が裏切られちゃったんですけど(いい意味で)。だって正直、昨年末に見たときはいまいち調子悪そうだったんだもの。アップテンポの曲より、「My Song」とか「夢」のほうがいい感じで、それはそれで、そういう方向いってるんだなって思ってたんだよ。そしたらこれだ。やられた。もう。『coup d'Etat』ってほんとにクーデターだよな、って思う。
(べつに『coup d'Etat』の曲ばかりが良かったってことじゃないんだけど。個人的に、最初に買ったのは『coup d'Etat』だったけど、ライブ見始めたのは『delayed』が出たときだったから、「ソドシラソ」とか「My Love's sold」とか、初めてだったと思う。だから余計にね。)
(実は「テイレベル」とか「タクシードライバーブラインドネス」とかも聴きたかったんだ。ちょっと残念。まぁ、これ以上欲張りすぎってやつでしょうが。)

自分のいた場所は、五十嵐さんのほぼ真正面、かなり後ろのほう。全体の2/3くらいかな。遠かったので表情まであまりよくは見えませんでしたが、しかし振り絞るように、なんだか全身全霊込めた感じで歌っている様子は分かりました。声も良かったと思います。
それとこの日は、中畑さんも最初から時折叫び声が聞こえてたりして、気合入ってましたね。「ex.人間」のコーラスなどでは、本当に歌も上手いなぁと思ったり。

照明がかなり凝っていたのも、やる気っぽかった(これはメンバーよりスタッフ側かもしれないけど)。
最初のほう、ほとんど真っ暗にして、メンバーの顔だけぼんやりと浮かび上がるくらいで、サビの盛り上がるところでだけバックライトががーんと当たってシルエットになるのとか、「イエロウ」で一面真っ赤になったのとか、「生活」で初めてステージ全部が白く明るくなって、背景にカーテンがかかってる襞が見えたのとか、「ソドシラソ」で稲光のようにランダムなストロボが入るのとか、ステージ向かって左斜め後方から差すライトで五十嵐さんの顔が半面だけ照らされるのとか、とにかくカッコよかったです。
そして、やっと!「パープルムカデ」が始まったときに、後ろのカーテンがすーっと引いて、スクリーンに白くムカデのシルエットが!ちょっと感動しちゃった。しかもそこから音響まで変わったような。ボーカルにはエコーかかって。ドラムがズガンズガン効いてて。閉じた空間の中だけど、拡がっていく感じがあって。この曲については、夏フェスのインパクトが強烈って言い続けてるんだけど、超えたかも、って思いました。純粋に音の力で(夏フェスは環境要因も大きいからね)。
そのあとの「無効の日」以降、スクリーンに映像が流れていました。そんな演出もシロップでは初めて見たので、やる気だ!というか、金かかってる!と思ってしまったり。ちょっとうるさく感じたところもあったのだけど(「夢」のときとか)、ステージのほうに集中したいじゃないかとか、でもラストの「正常」ではそのうるささが逆に効果になってきて、最後、五十嵐さんに必死で集中しようとしながら、背景に流れる街の雑踏や車の行き交う早回しの映像に酔いそうになって、音と合わせて世界が溶けていくような、その感じがまさにシロップらしくて。いい演出だったと思います。

あと、「シロップ長くやってますが、今回初めてゲストを」というのもまた、なんだか大きくなってきてるのかな、と感じさせますね。バイオリン素敵でした。繊細な音色で、音に広がりが増して。「My Song」とか綺麗だったなぁ。

美しい音と映像に酔って、圧倒されたまま、「正常」で終わり。
え、これで終わり?と思ったのは、定番をまだやってないところがあったからで、しかし、ここまでの内容の充実度と言ったら。もう充分に満腹なくらいでしたよ。


空になったステージは暗く、再びムカデが映し出され。会場からアンコールを求める拍手。手拍子に集約されていくのがけっこう早くて、声は少なかったけど、静かな一体感がありました。
そして、またステージ上現れた人影は4人。4人目、さっきのバイオリンの女性じゃないし、ギター持ってる。誰か分からないまま、チューニングが始まりました。それがまた、演奏前のオーケストラのそれのような、緊張感と期待感が混ざり合って膨らむような音で。その中に徐々に、ゆっくりとしたドラムとベースの拍が刻まれて、立ち現れてきた曲は「She was beautiful」。ギターが一本多いと、音の厚みが全然違う。というのは当たり前かもしれませんが、『COPY』のシンプルな音より、ずっと最近のシロップらしくなっているとも言えるのかな。音の洪水に沈むような感覚があって、気持ちよかったです。一曲終わったところで五十嵐さんから「bloodthirsty butchersの吉村さんです」と紹介があり、会場に「おお」とざわめきが走ってましたね。そのあとの「天才」は、打って変わって激しく、鋭角的で、物凄いカッコよかった。背景のスクリーンが赤くなって、奏者のシルエットがくっきり黒々と出るのも。
新曲?は、ちょっとだけだったんですが、五十嵐さんの弾き語りっぽく、歌詞は良く聞き取れなかったけれど、「俺が俺であるために、魂を売り渡す」って、言ってたような、気がする。文脈から言えば「売り渡さない」だったのかもしれないけど…シロップだし一概にそれで決定できないかなとか思ったり…?
そして、曲がふっと途切れた感じで一拍置いて、「声が聞こえたら 神の声さ」という叫び。「ぎりぎり絶唱と言うべきか」とか、夏フェスのときROCK'IN JAPANオフィシャルのライブレポに書かれてたの、たしかこれだったと思うんだけど。「coup d'Etat」。二回繰り返して、「イェー!」っていう。そうしたら、それまでずっとおとなしかった、会場の後ろのほうまで、私のいた辺りまで、うわーってたくさんの腕が、拳が突き上げられて、その瞬間が感動的だった。シロップのお客さんて、まぁ歌が歌だし、わりと静かで、じっと聴いてる人のほうが後ろのほうなんかは多くて、めいめい好きに楽しむと言う感じで、フェスだと前のほうけっこう激しかったりしたけど、この日は前の様子は良く分からなくて、でも、ああやっぱりみんなすごく好きなんだねっていうのが、その瞬間に見えた感じ。ワンマンってやっぱり違うな、良いなって思いました。「空をなくす」はいい盛り上がりだった。私もこの辺から跳ねてました。
(余所様で書かれてたので思い出しましたが、確かに「地球の自転に酔った」って歌ってましたね。その時は違和感なかったんけど、CDの歌詞は「車の移動に酔った」なんだ。スケールでか!でも、へたれ度合いも格別(笑)。他のライブでもそう歌ってたか?)

歌い捨ててく感じで、また一度退場。
しかし会場の熱気はさっきより上がっていて。手拍子が前よりピッチ速いの。
そして次に出てきたときの、五十嵐さんはすごかったなぁ。ギター持たずに手マイクで、いきなり「イェー!」とか叫び出して。「オイ!オイ!」って煽りだして。飛び跳ねてて。あんなテンション高いつーか、ロックな五十嵐さん、私は初めて見ました。そんなことされたら、こっちも叫んで、腕上げて、跳ぶしかないじゃないですか。ドラムが鳴り出して、中畑さんが「寝不足だって言ってんのぉーー!!」って叫んで、そのままドラムとベースだけで、「落堕」!ぎゃーって感じです。凄カッコよかった!2番の途中くらいまで手マイクで歌ってて、そこでやっとギター持ってきてもらってました。
続けて「真空」、「翌日」と、テンション上がりっぱなし、私は跳びっぱなし。こんな跳ぶ予定じゃなかったのに、汗かく予定じゃなかったのに(笑)。シロップでこんなに大興奮とは。

3曲やって、ピックも投げて、ステージ去って行きましたが、しかし会場の興奮は冷めやらない。というか、さっきから退場するたびに、こっちのテンションは上がる一方だよ!拍手がさらに熱を帯びてる(もうほとんど揃わない<笑)。
だから3度目に出てきてくれたときも、ありがたいと言うよりは、そうしてくれなきゃ収まらないくらいのイキオイで。
そこで五十嵐さんが言いました。「バカみたいだけど、今、武道館でやってるような気がしてる」。その気持ちがすごく伝わってきたというか、私もかなり入り込んじゃって、興奮状態にいたんだと思う。「シロップが武道館でやったら、すごくない?」「世も末だ」「俺は逃げるね」と言うのには笑ったけど。
最後の曲は「Reborn」。聴かせる曲で。最後の「生まれ変わっていくのさ」で、「いく〜いく〜いく〜」と繰り返す五十嵐さんの声が沁みるようだった。そして同時に曲と詞の良さも心に沁み込んできた。良いクールダウンでもありましたよ。「今日は本当にありがとう」と退場していって、客電がついて、今度はみんな収まった(笑)。でもちょっと、しばらく期待して待ってみてたよね。SEが鳴り始めてから、もう一度大きな拍手があって。すごくいい終わりでした。



AXは出るときにフライヤーを配ってくれますが、受け取ったらイキナリ「Syrup16g 渋谷公会堂」との大きな明朝体が目に飛び込んできて、びっくり。マジっすか?すごい、出世じゃんって。そもそも、この日AXが本当にみっちり満員だったことから、けっこうすごいよなーって思ってたので。去年のHELL-SEEのときは、ここまで満杯じゃなかったよね?
ちょっと見た紹介や批評で、「メインストリームに加わらない独自のスタンス」だとか、「ポップスを聴いて明るくなれるマジョリティには全く必要とされない音楽」だとか書かれてて、まぁその通りだよね、とか思ってて、むしろそれが誉め言葉だと思ってたけど。でももうこれだけの人に聴かれてて、市民権得てるんだ、というような。べつに、売れて欲しくないとか、そういう気持ちがあるわけじゃなく、ただ、この音楽を好きな人がこれだけいるということに、軽い驚きを感じてしまう。
こんなに、暗くて、痛くて、どうしようもないこと言ってるのにね。

しかし、どんなにネガティヴな内容でも、それを表現するということは必ずプラスのエネルギーであるということを、シロップのライブは強く感じさせてくれる。
話が逸れますが、『東京ガールズブラボー』のあとがきの岡崎さんと浅田彰氏の対談で浅田氏が言っていたことだと思うけど、「戸川(純)さん自身にはやり続けていく強さがあるんだけど、ファンの子の中には本当に危ないところにいっちゃう人もいた」というのをちょっと思い出すんですよ。表現者と、ただそれを受けている側は違うということ。どんなに暗いこと言われたって、絶望を歌ってたって、歌ってる本人は、本当に絶望してたらわざわざそんなこと歌ったりしないわけで、だからそれに共感しても、同じだと思ってはいけない、というか、その絶望に安心して、そこに安住してちゃいけないよなぁ、と、思うわけで。
シロップは特にね、CDでだけ聴いていると、その暗さ、痛さの中に浸りこんでしまうから。それはそれで心地が良いし。
でも、ライブに行くと、それとは全く違うエネルギーを目の当たりにする。
そしてそのエネルギーが客席に波及する度合いが、最近のライブはどんどん上がってきてる。すごく良くなってきてると思うんですよ。ただ沈み込むんじゃなく、その場を共有して、みんなでその表現を受け止めて、一緒になってノッて跳んで騒いで、少し、プラスになる。それは、「ねえ、こんな普通をみんな耐えているんだ」に通じる感覚かもしれない。救い、というのじゃないけど。マイナスメッセージが、ちょっとだけど、前へ進む力に、変換されるような気がする。

いろいろひっくるめてこのライブは、偉そうな言い方になりますが、シロップがすごく良くなってる、ということを感じさせられるものでした。バンド自身も、お客さんも含めて、着実に良い方向に向かってる。向かっていくエネルギーが高まっているというか。ああ、こんなに良かったんだ、と改めて思わされました。
ライブ後の高揚感の中に、今年の、今後のシロップに対する期待が膨らんで、でも期待しすぎてしまうのが怖いような。
年始一発目に良いライブ見たですよ、本当に。今年はシロップイヤーになるのか?


物販:ムカデTシャツ黒、ゲット。年末、CDJでは売切れで買えなかったので、嬉しい。暗闇でムカデが蛍光緑に光る!